雪の旋律に響く心 – 第1章

「合うかどうかは、お前が決めることだ。俺は、お前なら素晴らしいものが作れると信じてる。」洋平は強く言った。しかし、カイトの反応はまだ鈍かった。「もう少し考えさせてくれ」と、彼は再びギターに目を落とした。

数日後、洋平は映画の主演俳優である高島秀次とカイトの顔合わせをセッティングした。カフェの一角で、カイトと秀次が初めて顔を合わせた瞬間、カイトは彼のオーラに圧倒された。秀次は爽やかな笑顔を浮かべながら、「カイトさん、お会いできて光栄です。僕、実はあなたの音楽のファンなんです」と、熱心に語りかけた。

「俺の音楽の…ファン?」カイトは驚いた表情を隠せなかった。自分の音楽が他人に影響を与えているという実感が、ここしばらくなかったからだ。「ええ、新曲が出るたびに必ずチェックしています。あなたの歌には、他では感じられない真実のようなものがあるんです。それが、この映画にもぴったりだと思っています。」秀次の真剣な言葉に、カイトは少しずつ興味を引かれていった。

その日の帰り道、カイトは自分でも驚くほど気分が軽くなっていることに気付いた。秀次の熱意と、彼の音楽に対する評価が、カイトの中で消えかけていた火を少しずつ灯し始めていた。「もしかしたら…やってみる価値があるかもしれないな。」カイトはそう自分に言い聞かせながら、洋平に向かって「考えてみるよ」と伝えた。

洋平はその言葉に安堵し、微笑んだ。彼の目には、久しぶりに前向きな光が戻っているカイトの姿が映っていた。

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