雪の旋律に響く心 – 第1章

「なぁ、カイト。新しいライブの話が来てるんだ。来月の頭に、ちょっと大きめの箱でやれる。これを機に、もう一度しっかりやってみないか?」洋平は真剣な表情で提案した。しかし、カイトはその話にほとんど反応を示さなかった。彼の視線は窓の外、降り続ける雪に向けられていた。

「…どうせ、また売れないだろ。」カイトの声は冷たく、どこか諦めが滲んでいた。その言葉に洋平は一瞬言葉を失ったが、すぐに意を決して口を開いた。「それでも、俺はお前の音楽を信じてる。どんなに売れなくても、必ず誰かの心に響くと信じてるんだ。」洋平の瞳には強い意志が宿っていた。それは単なる仕事としての信念だけではなく、カイトに対する個人的な思いが込められているものだった。

カイトはしばらくの間、洋平の顔を見つめた。彼の表情には確かな愛情と信頼が見て取れる。しかし、それでも自分の中の情熱が完全に戻ってこないことに、カイトは心の中で葛藤を抱え続けた。

「…もう少し考えさせてくれ。」そう呟くと、カイトはそのまま部屋の奥に消えていった。洋平はその背中を見送りながら、小さくため息をついた。「お前が本当に望む道を見つけられるように、俺はいつでも支えてやる。」心の中でそう誓いながら、洋平は再びカイトの成功を信じる気持ちを強くするのだった。

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