雪の旋律に響く心 – 第3章

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第5話: 「ライブへの道」

映画のプレミアライブが決定したという知らせは、カイトにとって久しぶりの大きなイベントだった。冬の寒さが厳しさを増す中、彼は再びステージに立つ準備を始めることになった。スタジオでのレコーディングが続く中、カイトの心の中には徐々にかつての情熱が戻りつつあった。ギターを弾きながら新しいアレンジを試すカイトの姿は、かつての彼を彷彿とさせるものがあった。

洋平はそんなカイトの姿を見て、安堵と嬉しさを感じつつも、複雑な感情を抱いていた。彼はカイトのために全力でライブの準備を進めることを決意し、様々なプロモーション活動を手配した。インタビューの設定、SNSでの告知、そしてメディア出演の調整まで、洋平は一切の手を抜かなかった。「これでカイトが再び注目されるはずだ」と、自分に言い聞かせながら、彼は次々と仕事をこなしていった。

しかし、洋平の心の中にはもう一つの悩みがあった。それは、秀次の存在だ。彼がカイトと過ごす時間が増えるたびに、二人の間に芽生えつつある親密さが、洋平の心を不安で掻き立てていた。洋平は、カイトにとっての秀次の存在がどれほど大きいのかを理解し始めていたが、それでも自分がカイトを支え続けるべきだという思いは変わらなかった。

ライブの準備が進む中、カイトは自分自身と向き合う時間を増やしていた。彼は自分が何を求めているのかを問い続け、音楽に対する情熱を再確認していた。「これが、俺が本当にやりたかったことなんだろうか…」と、彼は自問自答しながらも、ステージに立つことへの期待が胸の中で膨らんでいった。