錆びた鍵の音楽 – 第3話

時の旅

リディアの研究室は、夕暮れ時の陽光で柔らかく照らされていた。部屋の中央に鎮座するグランドピアノの上には、修復された鍵と、謎の楽譜が置かれている。リディアは深呼吸をして、鍵盤の前に座った。

彼女の指が、楽譜に従って鍵盤を滑ると、部屋中に美しい旋律が広がった。その音楽は、普通のメロディとは異なり、神秘的で幻想的な響きを持っていた。

やがて、リディアの周りの景色が変わり始める。研究室の壁や家具が消え、彼女の目の前には19世紀のヨーロッパの町並みが広がっていた。馬車が通り過ぎ、子供たちが道端で遊んでいる。古びた建物や石畳の道、人々の服装…すべてが、彼女が研究してきた時代そのものだった。

そして、彼女の目の前に、アルトゥーロの姿が現れる。彼は家族と共に、大きな鍵を手に持ち、何かを話し合っていた。リディアは息をのみ、その様子をじっと見つめていた。

アルトゥーロの家族は、彼と共にその鍵を使い、一つの扉を開ける。扉の向こうには、異なる時代や場所へと続くポータルのようなものが広がっていた。彼らは、その扉をくぐり、別の時代へと消えていった。

リディアは驚きと感動で涙を流す。彼女は、アルトゥーロとその家族が、この鍵と楽譜の力を使って、時を超えて移動していたことを確信する。彼らは、代々この鍵の秘密を守り、それを使って時空を旅していたのだ。

やがて、その光景は消え、リディアは再び自らの研究室に戻った。彼女は、その経験を忘れられないことを知りながら、楽譜と鍵を大切にしまい込んだ。アルトゥーロの消失の謎が、少しずつ明らかになってきたのだった。

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