古書店の秘密 – 第1話

ある日記の謎

「紙の旅人」の店内は、何十年もの時間をかけて築かれた巨大な本の迷宮のようだった。美雨は、一日も早く店を再開するため、毎日のように店の整理を行っていた。篠原昭夫の死から数週間が経過し、彼の存在を感じさせるものが少しずつ薄れていく中、美雨は新たな発見をすることになる。

ある日のこと、古い棚の奥から一冊のノートを発見した。レザーの表紙には、手の込んだ装飾が施されており、美雨の目には特別なものとして映った。彼女はその日記を手にとり、ページを開いた。

最初のページには「昭夫の秘密」というタイトルが記されていた。そして、その後に続くページには、特定の本のタイトル、著者、ページ番号がずらりと並んでいた。それと同時に、それらの本に関連するかのような暗号めいた文章が記されていた。

例えば、「夏の日の思い出 – 大村裕 – 34ページ – “時計の針が”の後」といったような注釈が多数記されていた。

美雨は、店内の所々に散らばっていた本を手に取り、日記に記された指示に従ってページを開いていった。指示されたページや文節を読むと、それが一つのストーリーを形成することに気づく。それは、昭夫の過去や彼の家族、そして戦争時代の出来事に関連するものだった。



昭夫がなぜこのような形式で日記を残していたのか、その理由は不明だったが、美雨はこれが単なる回想ではなく、何か重要なメッセージを伝えるためのものであることを感じ取った。

日記の中には、昭夫が若い頃に出会った人物や、特定の場所、事件に関する記述も散見された。美雨は、これが彼の普段語らなかった過去や秘密に関連しているのではないかと考え始める。

そして、最も心に響いたのは、日記の最後のページに書かれていた言葉だった。

「私の死の真相は、これらの本の中に隠されている。美雨よ、私の過去を知ることで、真実を明らかにしてほしい。」

美雨の心は高鳴った。祖父が残したこの日記が、彼の突然の死と関連している可能性が高いことを感じた。彼女は、真実を知るための手がかりとして、日記に記された本や暗号を追う決意を固めた。昭夫の死の真相を明らかにするため、彼女の長い探求が始まるのだった。

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