聖夜に注ぐレクイエム – 12月15日

スタッフの一人が怯えたように報告する。真知子は眉をひそめ、考え込む様子を見せた。

「仕方ない。警察に連絡するしかない。」

「失踪?」

その知らせを受けてホールに駆けつけたのは、警察官の大沢陸だった。黒いコートに身を包み、冷たい風を背負って会場に足を踏み入れると、目の前には緊張感で固まったスタッフたちと、不穏な空気に包まれた舞台裏の光景が広がっていた。

「はい、早坂怜子さんが控室にいないんです。開演時間を過ぎても連絡が取れず、居場所が分かりません。」

三浦真知子が苦しそうに説明する。その顔には、怜子への信頼と愛情が滲み出ていたが、それ以上にこの状況をどうするべきかという焦りが見え隠れしていた。

「控室は確認済みか?」

「はい。中は普段と変わりありません。ただ、唯一気になるのは……。」

「何だ?」

真知子は控室に案内しながら、怜子が残したという楽譜を差し出した。それは彼女の新曲「レクイエム」のスコアだった。

「これが問題の楽譜です。」

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