聖夜に注ぐレクイエム – 12月15日

大沢は考え込んだ。失踪の理由は不明だが、控室に残された痕跡から察するに、自らの意志で姿を消した可能性は低い。それならば、何者かによる拉致か、それとも……。

「この楽譜は、私が預からせてもらいます。それと、控室の監視カメラ映像は?」

「確認しましたが、特に不審な動きは映っていませんでした。ただ、映像に一部ノイズが入っている時間帯があります。」

監視カメラの映像にノイズが入るのは珍しいことではない。しかし、それが怜子の失踪と何らかの関係があるとすれば、そこに犯人の意図がある可能性も考えられた。

大沢はホールを後にしながら、ふと耳に入るクリスマスソングのメロディに足を止めた。街中で流れる音楽は、怜子の演奏とは似ても似つかないほど軽やかで、どこか虚しさを感じさせた。

「一体、どこへ行ったんだ……。」

彼女が最後に残した楽譜には、何か重大な意味が込められているに違いない。大沢は手にしたスコアを見つめながら、その謎を解く決意を新たにした。

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