聖夜に注ぐレクイエム – 12月23日

薄暗い廃工場は冷たい風の音だけが響いていた。陸は慎重に建物内を進み、中村が隠れていると思われる場所を探した。すると、遠くの部屋から微かに人の気配を感じた。

「中村拓也か?」

陸が声を張り上げると、返事はなかった。しかし、直後に何かが倒れる音が響いた。警戒を強めながら部屋に踏み込むと、中村と思われる男が立っていた。彼の表情には、焦りと恐怖が入り混じっていた。

「お前が怜子さんを脅迫し、失踪に関わっているのか?」

陸が問い詰めると、中村は苦しげに笑みを浮かべた。

「俺は真犯人じゃない。だが、怜子は俺を知っていた。俺が火災の原因を知っていることもな……。」

「どういう意味だ?」

「10年前、俺は学校の火災現場で何かを見たんだ。そして、それを誰かに知られるわけにはいかなかった奴が俺を脅した。」

中村の言葉を聞き、陸は彼が真犯人ではなく、事件の目撃者である可能性に気づいた。しかし、その瞬間、背後から何者かが陸を襲撃した。

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