桜井美咲は、普通の女子高生。内気で消極的な性格の彼女は、いつも一人ぼっちで過ごしていた。学校では友達がほとんどおらず、放課後の帰り道も一人で歩くのが日常だった。しかしある日、そんな美咲の運命が大きく変わることになる。
帰宅途中に突然現れた不思議な光に包まれ、美咲は異世界「ラビリントス」へと転生してしまった。心臓がドキドキしながら目を開けると、目の前に現れたのは肥満の妖精ポンポンだった。
「やあ!私はポンポン!君がここに来た理由、それは王子様が君の純粋な「愛情」を必要としているからだよ!」
ポンポンは笑顔で話しかけてきた。しかし、美咲は内気で自信がないため、なかなか友達を作ることができなかった。ポンポンはそんな美咲を励ましながら、王子の元へ向かう旅に出ることに決めた。
「愛情って何だろう?」と、美咲は考えながらも、ポンポンに引き寄せられるように旅が始まる。道中、様々なユニークなキャラクターたちに出会う。生意気で豪快な魔法使いや、いつもお腹を空かせているエルフなど、彼らとの出会いは美咲にとって新しい刺激だった。
最初は恥ずかしがって強く声を出せなかった美咲も、次第に彼らとのやりとりを楽しむようになる。しかし、内気な性格は彼女の旅を妨げることも多く、道中のトラブルに対応できずに困ることもあった。
「美咲、もっと自己主張していいんだよ!」ポンポンが笑いながらアドバイスをくれる。「愛情は表現することが大事だからね!」
彼女は、少しずつ自分の気持ちを理解し始め、仲間たちとの絆を深めていく。しかし、旅の途中で遭遇する数々の奇妙な出来事は、彼女の心を乱す要因でもあった。
悪友たちとの賑やかな冒険や、王子からの優しい眼差しを浴びる中で、美咲はほんの少しずつ自信を取り戻し始めた。彼女の心には、仲間や王子への感情が芽生え、愛情の意味を知ろうとする努力があった。
だが、物語が進むにつれて、次第に王子の求める「愛情」が、思っていた「純粋」なものではないことが明らかになってくる。
ある日、美咲はポンポンと共に王子の城に辿り着いた。王子は美しい金髪に、優雅な衣装をまとった青年だった。美咲は彼の優しい笑顔を見て、心が躍った。
「君の持っている「愛情」が欲しい」と王子は言う。しかし、その言葉の裏には不明瞭な代償が秘められていた。
美咲は、その瞬間、直感で「この愛情はどうか危険なのではないか」と思ったが、彼女の心を掴む魅力的な王子に抗うことはできなかった。彼女は、王子のために自分の愛情を注ぐ決心をする。
「私の愛情、あなたに捧げます!」美咲は無邪気に言った。しかし、その言葉が異世界を揺るがす引き金になった。彼女の「愛情」が強く共鳴することで、異世界ラビリントスは混乱に陥り、巨大な獣が暴れ始めたのだ。
ポンポンは心配そうに美咲を見つめるが、時すでに遅し。王子が求めていたのは、結局は彼女を利用することだった。「君の愛情を利用して、力を得る」と囁く王子の笑みは、次第に不気味なものへと変わっていった。
美咲はその瞬間、自分が受け入れた「愛情」が、彼女自身を滅ぼす呪縛になっていることに気づく。しかし、彼女にはその呪縛から逃れる力がなかった。
結局、美咲は運命を受け入れ、愛情の名の下に闇に飲み込まれてしまった。異世界ラビリントスの混乱は続き、美咲の心を利用した王子は、その後、さらなる権力を手に入れ、彼女の心の声を無視して君臨し続けた。
美咲の無邪気な心が引き起こした悲劇は、コミカルな雰囲気の裏に隠された厳しい現実として異世界の物語に刻まれたのだった。