異世界冒険者ギルドの日常 – 第2章:前編

第1章: 前編後編 第2章: 前編|後編

 翌朝、目覚ましベルより早く目が覚めた。窓の外、薄靄にけぶるトリスの街並みが灰青色に沈んでいる。

 胸の奥は妙に落ち着かない。新人研修班「日替わり定食隊」を率いて初めての実地試験――〈地下古代遺跡F層〉への同行が今日だからだ。受付係の私がダンジョンへ入るなど、前世では考えられない展開だが、不思議と恐怖より好奇心が勝っていた。

 ギルドの中庭へ向かうと、既に三人は集合していた。

 ティリアは矢羽根を一本一本点検しながら軽くストレッチ。

 ガルドは巨大な大剣を肩に、フライパンサイズの肉まんをもぐもぐ。

 リリィは試作の携帯鍛冶箱を分解整備し、歯車の回転を確かめている。

「遅いわよ、受付係」

 私の気配を察したティリアが片眉を上げる。

「いや、定刻十五分前だが?」

「エルフにとって早起きは美徳なのよ」

 そんな会話を他所に、ガルドが肉まんを一口で平らげた。

「腹ごしらえ完了! ユウト、例の“数字で安全確認”ってやつ、頼んだぜ?」

「ああ。《エクスセル》で今日の危険指数を試算済みだ。F層は昨日の魔力放射量が平常の一・二倍。罠発動率が上がっているから、十分注意しよう」

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