涙の王国

由香は、いつも静かな陰に隠れている内気な女子高生だった。友達も少なく、彼女の心は孤独で満たされていた。周囲の明るい笑い声が彼女には遠い世界のことのように感じられ、孤立感が彼女を取り巻いていた。あの日、放課後の図書館で見つけた古びた本が、彼女の運命を大きく変えることになる。

その本は埃をかぶり、表紙にはどこか物悲しい表情をした王女が描かれていた。由香は何気にその本を開いた瞬間、眩い光に包まれ、意識が遠のいていった。目を覚ました時、彼女は見知らぬ場所に立っていた。周りは広大な平原で、どこか哀しげな空気が漂っている。

気がつくと、由香は「涙の王国」と呼ばれる場所の王女として目覚めていた。しかし、彼女が感じたものは喜びではなく、重苦しい運命だった。この王国は、悲しみに満ちた絶望的な場所で、人々は魔女の支配下にあり、涙を流し続けていた。

王国は暗く、冷たい空気が漂っている。由香は恐る恐るその場を歩き始めた。彼女の心は不安でいっぱいだったが、その瞬間、目の前に黒い服をまとった若い女性が現れた。魔女だった。彼女は由香を見つめ、不気味な微笑みを浮かべている。 「あなたが王女ね。とても魅力的な存在。だが、私の力を奪おうとしているなら、さあ、試練を受けてもらおう。」

由香は怯えた。彼女は自分にできるはずがないと思った。自分が無力だと感じるたびに、心の奥底から冷たい恐れが湧き上がる。だが、周りを見渡すと、この王国の人々が苦しむ様子が目に入った。彼らは悲しみに沈んでおり、由香はその姿を見て何かを感じる。彼女は自分の心に眠っている力を解放し、王国を救うことを決意しようとした。

しかし、彼女は一人で行動することが難しかった。友達が欲しい、誰かに頼りたい、そして彼女の恐れに負けずに進みたい。でも、由香の内気な性格は彼女を引き戻す。魔女の恐ろしい声が思い出のように心にこだまする。「私の力を受け止められるかしら?」

由香は逃げ出し、試練から目を背けた。彼女は王国の人々がさらなる悲劇に見舞われていく様子を見てしまう。子どもたちが魔女に囚われ、笑顔を失い、無邪気な眼差しが消えていく。由香は悲しみに胸が締め付けられ、何もできない自分が恨めしかった。

ついに、彼女は決意する。恐れを振り払い、魔女に立ち向かうことにした。だが、魔女は次元を超越する存在で、想像を超える力を持っていた。由香は全力を尽くしましたが、あっけなく敗北してしまう。彼女は地面に倒れ込み、視界が滲んでいった。

魔女は冷ややかな声で笑った。「やはり、あなたは小さな王女に過ぎない。私の力には敵わない。

王国の運命は貴女にかかっていたのに、どうしてその可能性を捨ててしまったのかしら。」

その後、由香は魔女に囚われ、彼女自身も絶望の闇に飲み込まれていった。涙の王国は彼女と共に、さらなる悲劇とともに墜落していくのだった。王女も、王国の人々も、全てが絶望の呪縛で飲み込まれ、光を失ってしまった。

彼女の選択が、誰も救わない悲劇的な結末に繋がり、由香の心はその悲しみと共に消えていく。彼女が目指していたものは、すべて手の届かない幻影だった。

そうして、涙の王国は歴史の彼方に消え去り、由香の存在も霧のように消えた。彼女が築こうとした希望の光は、結局は闇に飲み込まれたのだ。

王国は、永遠の涙に包まれたまま、運命の悪戯に翻弄され続ける。

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