彼は息を整えながら、自分自身に問いかけるように呟いた。自分でも信じられないほどの力が、無意識のうちに発動していた。目の前で、空間がねじれ、魔獣たちの姿がかすかにぼやけ始める。まるで現実の法則が、彼の意志の前で屈服しているかのようだった。
魔獣の一匹が、必死に牙をむき出しにして彼に迫ってくる。だが、再びその瞬間、陽斗の内側から放たれた力が、強烈な波動となって周囲に広がる。魔獣は、その力の衝撃に圧倒され、混乱状態に陥る。次々と、獣たちは茂みの中へと散り散りになり、やがて森の奥へと逃げ去っていった。戦いは一瞬のうちに終わり、陽斗はただ、驚愕と安堵の入り混じった表情で立ち尽くしていた。
「どうして……こんな力が……？」
彼は震える声で独り言をつぶやいた。先ほどの体験は、彼にとって未知の領域への扉を開く出来事であった。心のどこかで、これこそが自分がこの異世界で生かされた理由であると感じ始めると同時に、その力に対する恐れも感じていた。自分の中に眠る未知なる力――それが、これからどんな未来をもたらすのか。疑問と期待が入り混じる複雑な感情が、彼の胸中を激しく駆け巡った。
「今のは夢か現か……」
陽斗は深呼吸をし、再び周囲を見渡す。空間の歪みは次第に収まり、森は再び穏やかな姿を取り戻し始めた。だが、彼の心の中には、まだ解明されぬ謎が山積していた。自分が発揮したその力は、ただの偶然の産物なのか、それとも何か大いなる運命の前触れなのか。問いに対する答えは、今はまだ見えなかった。
その時、遠くから足音が近づいてくるのを感じた。陽斗は顔を上げ、警戒心を抱きながらも、やがて現れたのは、一人の若い女性であった。彼女は心配そうな表情で、息を切らしながら話しかけた。
「あなた、大丈夫ですか？ あの魔獣の群れ、もうすっかり消えましたけど……」
女性の声には、優しさと驚きが混ざっていた。陽斗はまだ動揺している様子で、ゆっくりと頷きながら答えた。
「ええ……今のは、本当に信じられない体験だった。自分でも知らなかった力が、急に……」
