彼は言葉を探すように、一瞬言葉を切ったが、すぐにその力の意味について考え始めた。
「あなた、こんな力をお持ちなんですね。もしかすると……」
女性は、遠い目をしながら、何かを確信しているように言葉を続けた。「もしかすると、あなたはこの世界で『選ばれし者』としての何かを持っているのでは？」
その言葉に、陽斗は内心で驚きを隠せなかった。前回森の中で聞いたあの声と、今の女性の言葉が、まるで運命の糸で結ばれているかのような錯覚を覚えた。しかし、同時に、彼は自分がただの偶然の犠牲者ではなく、何か大きな物語の一部であることを確信し始めていた。
「……選ばれし者。僕は、本当にそのような存在なのだろうか？」
陽斗は問いかけるように女性を見つめた。彼女はにっこりと微笑みながら、やさしく答える。
「あなたの中にある力は、決して無駄ではありません。きっと、これからあなた自身も、その力の意味を理解し、活かしていく方法を見つけるでしょう。」
その言葉に、陽斗はほんの少し心が軽くなるのを感じた。自分がこれからどんな困難に直面しようとも、今発現したこの領域能力こそが、新たな可能性への第一歩であることを感じさせるものだった。
やがて、森は再び静けさを取り戻し、陽斗は自分の内に湧き上がる力に対する戸惑いと期待の入り混じった思いを抱きながら、再び歩き出す決意を固めた。彼の胸中には、これから待ち受けるであろう数々の試練と、その中で真実の力を発見するための熱い情熱が、静かに、しかし確実に燃え上がっていた。
エピソード：１
