異世界農業革命 – 第3話

プロローグ 第1話 第2話

 大河一樹はエル・リーフ村を再生するため、まず真っ先に「土壌改良」の大切さを説いた。村の人々にとっては、これまで見向きもしなかった新しい発想だ。以前までの農法は、単に畑を耕し種を撒く程度であり、魔力が不足して作物が育たない理由も、「この土地は呪われているのではないか」といった程度にしか認識されていなかった。しかし、一樹に言わせれば、土の状態を無視しては何も始まらない。魔力の存在がどれだけ特異的だろうと、基本となる土の栄養や微生物の働きが整っていなければ、植物は育つはずがないのだ。

 まず、一樹は村の中央にある広場の一角を実験圃場として借りることにした。エリアスやシルヴィア、さらに数名の村人も集まり、荒れた土をスコップや鍬で掘り返し始める。ところが、土は触れただけで砂のように崩れ、パサパサとしてまったく湿り気が感じられない。加えて、以前は豊かな養分があったと思しき深い層も、石や枯れた根が絡み合うだけで有機物のかけらすら見当たらない。「魔力が枯渇している」というのは、単に魔法が使いにくいだけではなく、植物や微生物も生育しづらい環境ができあがっているということなのだろう。

 だが、この状況に一樹はむしろ闘志を燃やす。現代で培った知識を応用すれば、魔力が乏しくとも作物を育てる下地を作れるかもしれない。そこで、まずは“堆肥づくり”に着手することを提案した。「土に必要な栄養分を補うには、まず有機物をしっかりと分解して微生物が活発に働ける環境を作らないといけません。適切な水分管理と温度、そして時間が必要なんです。」そう一樹が説明すると、村の人々は首をかしげる。彼らにとって、堆肥といえば家畜の糞や落ち葉をただ山積みにしておくだけだったため、「そこまで手間をかける意味があるのか」と不思議に思うようだ。

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