異世界冒険者ギルドの日常 – 第2章:後編

「カウント残り二分七秒!」

 バキン、と金属が裂け、ハッチが内側へ転がった。熱風が吹き出し、頬を焼く。

「これが非常遮断栓か!」

 中に露出した赤銅色の車輪状バルブは、身の丈ほどもある歯車に連結され、わずかな振動で軋みを上げている。

「手動で十分回すには三人がかりだ。ティリア、矢筒を置いてこっちへ!」

「了解!」

 ユウトが左、ティリアが右、リリィがハンドル下部へ。そこへガルドが大剣を隙間から引き抜き、後ろから三人を覆いかぶさるように支える。

「回せッ!」

 四人の筋肉と魔力が軋みを上げ、歯車がゆっくり動き出す。

 カウンターは一分三十秒。

 しかしバルブが半回転したところで、ギイイッ、と音が詰まり、手応えが石の壁のように重くなった。

「ストッパーが噛んでる!」

「あと四十五度……足りない!」

 汗が飛び散り、手のひらが滑る。魔力圧が再び高まり、床面が赤熱し始める。

「――待て、角度が問題じゃない。トルク不足だ」

 ユウトの脳裏に、前世で見た工場プレス機のトルク計が重なった。

「リリィ、鍛冶箱に歯車噛ませるアダプタは?」

「ある! でも調整に二十秒!」

「俺に任せろ! 二十秒稼ぐ!」

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