ガルドが大剣を立て、剣身に自己魔力を纏わせると、燃えるような蒼光が走った。
「うおおおおおッ!!」
獣人特有の咆哮。剣身を床へ叩きつけると振動波が広がり、炉心の脈動と共鳴して逆位相ノイズを生み出す。紫の光が揺らぎ、カウントが一瞬止まる。──二十秒。
「セッティング完了ッ!」
リリィがハンドルに金製ギアを差し込む。歯車同士が嚙み合うと、回転半径が三倍に拡張された。
「再開!」
全員で押す。ググッ……最後の抵抗を超え、バルブがカチリと音を立てて制止した。
瞬間、紫光が霧散し、炉心の唸りが潮が引くように静まる。
制御盤のカウントがゼロで止まり、表示は緑色の「安全モード」に切り替わった。
轟音の代わりに訪れた静寂。四人は肩で息をしながら顔を見合わせ、そして同時に笑った。
「……成功、だな」
「やったぜ!」
ガルドが拳を突き上げ、リリィがギアを高く掲げた。
ティリアは弓を拾い上げると、ユウトへ視線を向ける。
「数字魔法だけじゃなく、判断も的確だったわ。認めざるを得ないわね。受付係、いい司令塔よ」
「ありがとう。でも終わりじゃない。暴走を起こした“別ルート”を塞がなきゃ、また同じことが起こる」
ユウトは制御盤に残る転送魔力ログを確認し、刻印された識別符号を目を細めて読み取った。
「“GD‐41”。王都本部財務局のコード……やはり帳簿の不審数字はここに繋がる」
ホールを閉ざしていた石壁は、炉心の負荷低下でロックが解除され、自動で持ち上がった。
外から駆け付けた遺跡管理局員が、彼らの姿を見て絶句する。


















