扉まで遮るものはない。だが黄金扉に触れようとした瞬間、天井の天秤が鈍い音を響かせた。
――ガガン。
天秤の片皿が沈み、もう一方が高く持ち上がる。
「均衡が崩れた……最終防衛コードが動くわ!」
マリエルが叫ぶや否や、天秤中央から長身の影が降り立った。
銀灰色のローブ、胸には“00”――灰色宰相直属筆頭、コードナンバー・ゼロ。
「王国の収支は我が掌の上。余計な監査など必要ない」
影が囁くと同時に、天秤の沈んだ皿が巨大な魔法陣へ変わり、回廊を呑み込む光が渦巻く。
「時間がない、強行突破!」
私は帳簿を抱え、黄金扉へ走った。
だがゼロがゆっくりと手をかざすだけで、扉の錠前が数字の鎖に変わり、いくつもの桁が私の周囲を取り囲む。
「数字で来るならこちらも数字で応じる!」
私はセルを全開、視界が青いコードで埋め尽くされる。


















