「黒字を喜ぶのは経営者だけ。監査は“適正分配”を求める――というわけで、配当金を支給しよう」
セルに“臨時配当率100%”を記載し、小判列を強制的に債権へ変換。すると硬貨の刃は光を失い、束の間だが“支給待ち”の紙切れに戻る。
そこへガルドが突っ込み、大剣の一薙ぎで紙束を吹き飛ばす。
リリィは床に残った小判を掴み、カタパルトのカウンターウェイトとして装填した。
「再利用、再利用っと!」
〈シグマ〉の一人が眉をひそめ、足元を影へ変える。
「転換ロスは経費扱いか? なら追加予算だ!」
彼は外套の内側から黒水晶のカードを抜き、空中へ投げる。
――黒水晶、《帝国歳入庁》と刻印。隣国の国璽付き!
「国境を越えて粉飾だって!?」
マリエルが蒼ざめる。
カードの背面から流れ込む魔力は、王国法の制限外。瞬く間に回廊を塗り替え、私のセルがエラーで真紅に染まり始めた。
「外国資金は評価基準外! フレームワークが壊されると数字が読めない!」
ティリアの矢が黒水晶に当たるが、弾かれ高く跳ねた。
私は歯を食いしばり、転送ログの奥に仕込んでおいた“互換アドオン”を《エクスセル》へロードした。


















