ゼロの鎖は“∞”の文字を核に持ち、分割総量が無制限に見えた。
(無限予算……!)
全身が凍りつきそうになるが、脳裏に浮かぶのは窓口で慌てる新人冒険者を支えた無数の“日報”。
――数字は必ず有限。窓口の締めは必ず来る。
私は拳を握り、セルにただ一つの関数を書き込む。
=IF(∞,1,0)
無限を真偽で評価すれば、自働セルは“1”と“有限”に置き換える。
鎖の桁が一瞬揺らぎ、∞の記号が“1,000,000,000”へ膨張――
「有限化完了、課税率100%!」
私は“超過利得税”をセルへ入力。鎖の数字は真紅に変わり、乱雑な計とともに崩れ落ちる。
ゼロの仮面の奥で瞳が細まる。
「面白い。では次は“債務不履行”を味わえ」
空気が震え、大法廷ドーム全体が暗転した。
残り十二分。
黄金扉はまだ開いていない。だが数字は、必ず締めを迎える。
私は息を整え、仲間たちに頷いた。
「ここが本当の総決算だ。帳簿を片手に――窓口係は最後まで諦めない!」


















