異世界で愛されるための数式

若き天才数学者、宮田葵。

彼女は常に数学に囲まれた暮らしを送っていた。アルカイダ大学での研究は周囲からの賞賛を集めていたが、同時に周囲との距離を広げていた。

彼女は、数字の世界に浸ることで、感情を放棄してしまったかのようだった。そんなある晩、重要な発表を控えていた葵は、疲れ果てて自宅の書斎でうたた寝をしてしまう。

目を覚ますと、まったく知らない場所にいた。

周りは青い空と緑の大地、そして奇妙な建物。アーチ状の木々が生い茂るこの世界は、どうやら異世界「テラアマリ」だった。もちろん魔法も存在している。

葵は自分が異世界に転生したことを受け入れるのにあまり時間がかからなかった。すぐに思ったのは、「数学を利用して、魔法を解明できるかもしれない!」ということ。

村人たちは彼女を見て驚き、「魔法使いが来た!」と喝采し始めた。

最初は戸惑った葵も、村人たちの素朴さとユーモラスな反応に心がほぐれていく。そして、彼女が初めて出会った村の少年、リオは彼女を特に気に入って、いつも陽気に話しかけてきた。

「魔法使いさん、今日は何の魔法が見られるの?」

そんな彼の言葉に、葵はつい笑ってしまった。

「私は魔法使いじゃないよ。数学を使って魔法の計算をするだけ。」

「それでも、魔法使いってことは間違いないじゃん! だって、普通の人は魔法を使うことなんてできないんだから!」

リオの言葉にはおかしみがあった。

日に日に彼との友情は深まっていった。リオはお調子者で、いつも冗談を交えた話し方をした。そんな彼の持ち味に、葵は魅了されていく。

「葵、また計算してるの?」

「っていうか、リオ、あなたがその計算を邪魔してるんだけど!」

彼は笑って、冗談を言い返す。そんな様子を葵は好ましく思いながら、時に真剣に数学的な話を進めた。

ある日、葵は村の広場で出会った魔法の数式に取り組んでいた。

それは多くの謎と困難が詰まった数式で、彼女の知識を試すものだった。その数式を完璧に解くことができれば、村全体を守る力を持つ魔法が完成するという。しかし、葵は頭を抱えていた。

「こうなのかな…いや、ここは違う…」

数時間経っても進展が見られず、思わず微分方程式の図を書き込む。

そんな時、リオが近づいてきて、ちょっかいを出してきた。

「また、難しそうな顔してるなー。何か手伝ってあげようか?」

「ふむ…」

助けを求めることはないと思いつつも、彼の明るさに心が軽くなる。彼の存在が、暗くなりがちな気持ちを照らしてくれる。

「数式が解けないの?」リオは葵をからかいながら、数式をじっくりと覗き込んだ。

「ちょっとね。これをどうにかしないと、村が危険なの。」

リオは一瞬真剣な表情を見せたが、すぐに軽やかに笑って、葵の肩を叩いた。

「じゃあ、一緒に考えてみようよ! その方が絶対楽しいし!」

その言葉に葵は意外と心惹かれた。

「楽しい…か。」

彼女は口範え、「どうして彼と一緒にいるとこんなに心が和むのだろう」と考えてみた。

しばらくして、彼は自分の見解を述べた。

「だって、数学も魔法も、どんなに複雑でも、一緒に解決策を見つければ、簡単に感じるから!」

葵は心に響くものがあった。「一緒に」という彼の言葉は、ただの数式の話にとどまらない深さがあった。

「そうか、私になるべく多くの人と関わりながら、この課題を乗り越えられるんだ。」

しばらく考えた後、彼女は再び数式に向き直り、そのままリオの提案を受け入れる決意を固めた。

『愛情』という概念に、自身を開くことが、この異世界での未来を見つける鍵なのかもしれない。

数日後、葵はリオとの共同作業を続けながら、数式をついに完成させた。

「やった!できた!」彼女は驚き喜び、村中に鳴り響く声をあげた。

村人たちはその声を聞きつけて集まってきた。「魔法使い様!おめでとう!」

葵は村人たちに囲まれながら、自分が求めていた存在を確認した。

「これで、村を守れるよ!」

村人たちの喜ぶ表情と、リオの笑顔を見て、彼女は自分の存在意義を見いだした。

彼の目の中に揺れる愛情を感じながら、これからの日々がどのように進展していくのか、楽しみでならなかった。

エンディング、「これからも、共に!」葵はリオと手を取り合い、新しい人生を歩むことになるのだった。

異世界での生活が、彼女にとって特別なものになっていくことを心から願い、彼らは明るい未来を描きながら幸せな日々を送っていくだろう。