前編 後編
満月の夜が近づくと、ツキノカイの空はより明るく煌々と輝き始めた。城では、満月の祭りの準備が進められていた。この祭りはユウトの先祖から続く伝統で、月の力を感謝し、未来への願いを込める大切な儀式が行われる。
リカはユウトの案内で、祭りの準備に参加した。彼女は月の女性たちと一緒に、月の花を束ねて祭りの装飾を作ったり、伝統的な踊りを学んだりした。その中で、リカはツキノカイの文化の奥深さや人々の温かさを感じていった。
祭りの前夜、ユウトはリカを城の最上階にある展望台に招いた。2人は満月の前夜の空を眺めながら、互いの未来について語り合った。
「リカ、明日の満月の夜が終われば、あなたは地球に戻ることができる。」ユウトは深い瞳でリカを見つめた。「しかし、私たちはもう再び会うことはできなくなる。」
リカは言葉を失った。彼女は確かに地球への帰還を望んでいたが、ユウトとの別れを考えると胸が痛んだ。
「ユウト、私たちは本当に2度と会えないの?」彼女の瞳は涙で濡れていた。
ユウトは頷き、答えた。「私たちの運命はそう定められている。満月の夜に地球と繋がるこの特別な時しか、私たちは会えない。」
リカはユウトに抱きついた。2人は月の夜の風に包まれながら、互いの温もりを感じ合った。
翌日、祭りの夜が訪れた。リカは月の伝統的な衣装を着て、ユウトとともに祭りの中心で踊った。周りの人々の笑顔や歌声、踊りのリズムに乗せて、リカの心は一時的に解放された。
しかし、祭りの最後の儀式が始まると、リカの心は再び重くなった。彼女は祭りの火に、ユウトとの思い出や未来への願いを込めて月の花を投げ入れた。火は青く炎上し、その光はリカとユウトの間の絆を象徴しているかのようだった。
儀式が終わり、リカは再び展望台に立った。満月が高く昇り、その光がツキノカイを照らしていた。リカの体は次第に実体を失い始め、彼女は透明になっていった。
ユウトはリカに近づき、最後のキスを交わした。「リカ、私たちの愛は永遠だ。満月の夜に、いつでも私はあなたを思い出す。」
リカの涙が月の砂に落ち、彼女の姿は完全に消えてしまった。
こうして、リカとユウトの切ない恋物語は終わりを迎えた。しかし、2人の愛は月の夜に生き続けることとなった。