雪解けの恋 12/22(fri) – 忘れられない笑顔

12月21日 12月22日

杏子は前夜の出来事を思い出しながら、再びあのカフェの扉を開けた。外は冷え込んでいたが、カフェの中は暖かい光で満たされていた。彼女は拓真がいるかどうかを探りながら、お気に入りの席に腰を下ろした。カフェにはクリスマスの装飾が施され、心地よいジャズが流れていた。

拓真はカウンターの中で忙しく動き回っていたが、杏子が入ってくるのを見て、彼女に微笑んだ。その笑顔は昨日感じたものとは違い、もっと自然で、暖かいものだった。杏子はその笑顔に心を動かされ、少し緊張しながらもカウンターに近づいていった。

「こんにちは」と杏子は声をかけた。拓真は「こんにちは、昨日も来てくれたよね」と応えた。その瞬間、杏子の心は少し軽くなった。彼女は拓真にコーヒーを注文し、少し会話を交わすことにした。彼女は昨夜の彼の印象を思い出しながら、彼のことをもっと知りたいと思った。



会話の中で、拓真が画家であることが明らかになった。彼はアート大学を卒業してから、画家としての道を歩み始めたが、生計を立てるためにカフェで働いていると説明した。杏子は彼の芸術への情熱に心を打たれた。彼の話し方は熱心で、目はキラキラと輝いていた。彼女は自分も好きな文学や映画について話し始めた。

拓真は杏子の話に興味深く耳を傾けた。彼女の文学や映画に対する深い理解と洞察力に、彼は驚いた。彼らの会話は自然と深まり、共通の趣味について話すうちに、お互いの距離が縮まっていった。杏子の柔らかな笑顔と知的な話し方に、拓真は魅了されていった。

しかし、彼らの会話はあくまで友好的なもので、互いの深い感情には触れなかった。杏子は拓真のことをもっと知りたいと思いながらも、恋愛に対する自分の不器用さを感じていた。彼女は、自分から感情を表に出すことが苦手だった。拓真もまた、杏子に対する感情をはっきりとさせることができずにいた。彼は自分の将来に対する不安から、恋愛に踏み込むことをためらっていた。