古びた手紙の秘密 – 第1話

夕食を済ませ、深夜になってもアカリの頭からは「カズマ」「港町」という言葉が離れなかった。布団に潜り込みながら、もし祖母が本当に大切にしていた相手がこの人だとしたら、祖母の人生にはどんなドラマがあったのだろうと想像が膨らむ。それと同時に、どうして祖母は結局カズマと結ばれることなく、祖父と暮らす道を選んだのかという疑問も生まれてくる。あの手紙から感じ取れる切実な想いは、まるでまだ宙ぶらりんのまま時間を止めているようだった。

翌朝、アカリは母に「少し休みを取るから、ばあちゃんがかつて住んでいた港町へ行ってみようと思う」と宣言した。母は「そんな急に…」と驚きながらも、娘の真剣な表情を見て何かを察したのか、反対する様子はなかった。「私にはわからないことだらけだけど、何かわかったら教えてちょうだい」と母が言うのを聞いて、アカリは静かにうなずく。祖母を知るための旅――それは、アカリ自身がまだ知らない祖母の人生、そして「カズマ」という謎の人物との関係を解き明かす最初の一歩になるような気がしていた。

手紙を手に取り、祖母の部屋に戻って見渡すと、まるでここにまだ祖母がどこかにいるかのように、部屋には当たり前のように日差しが差し込んでいる。アカリはそっとふすまを閉めながら、頭の中でどう行動すべきかを考え始めた。きっと祖母は何か特別な理由があって、この手紙をしまい込んだに違いない。けれどそれを確かめられる人間は、もはやアカリしかいないのではないか。そう思うと、いつも家族を支えてくれた祖母のためにも、何かできることがあるのではないかという気がしてならなかった。そんな淡い使命感とともに、アカリは心を決める。自分の目で、祖母が生きていた頃の足跡を探しに行こう、と。

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