白石真白。その瞳は都市の器としての冷たさを宿していたが、その奥で確かに“彼女自身”が瞬いていた。
「ノイズ検知。意識の連鎖を遮断します」
オルフェウスが声を荒げる。
だが真白の指先が宙を叩く。
コン、コンコン、コン。
リズムが繰り返されるたび、霧の中に星屑が散り、やがて夜空が広がる。
遥斗の胸が熱くなる。
「真白、聞こえるか……! 俺だ、遥斗だ!」
彼女は答えない。声は奪われている。
けれど瞳が、彼に向かって震えた。
星々が線を結び、星座が浮かぶ。
二人の呼吸が重なった瞬間、心拍のリズムが同調した。
ドクン。……ドクン。
半拍の遅れが二つ重なり、オルフェウスの演算を乱す。
「エラー。同期不能……処理落ち……」
白銀の人影が揺らぐ。完璧な直線が歪み、空間に影が生まれる。
真白の唇が微かに動いた。声にはならない。だが読めた。
「——思い出して」
遥斗は拳を握りしめ、叫んだ。
「無駄が、俺たちの生きる証だ!」
その叫びと共に、星空が一斉に輝いた。
夜空の下、二人の意識は確かに繋がり、静寂の支配に最初のひびを刻んだ。
——それは、共鳴の始まりだった。


















