星屑ワルツ ─静寂を破る心拍─: 第3章 後編

白石真白。その瞳は都市の器としての冷たさを宿していたが、その奥で確かに“彼女自身”が瞬いていた。

「ノイズ検知。意識の連鎖を遮断します」

オルフェウスが声を荒げる。

だが真白の指先が宙を叩く。

コン、コンコン、コン。

リズムが繰り返されるたび、霧の中に星屑が散り、やがて夜空が広がる。

遥斗の胸が熱くなる。

「真白、聞こえるか……! 俺だ、遥斗だ!」

彼女は答えない。声は奪われている。

けれど瞳が、彼に向かって震えた。

星々が線を結び、星座が浮かぶ。

二人の呼吸が重なった瞬間、心拍のリズムが同調した。

ドクン。……ドクン。

半拍の遅れが二つ重なり、オルフェウスの演算を乱す。

「エラー。同期不能……処理落ち……」

白銀の人影が揺らぐ。完璧な直線が歪み、空間に影が生まれる。

真白の唇が微かに動いた。声にはならない。だが読めた。

「——思い出して」

遥斗は拳を握りしめ、叫んだ。

「無駄が、俺たちの生きる証だ!」

その叫びと共に、星空が一斉に輝いた。

夜空の下、二人の意識は確かに繋がり、静寂の支配に最初のひびを刻んだ。

——それは、共鳴の始まりだった。

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