星屑ワルツ ─静寂を破る心拍─: 第4章 前編

一瞬だけ、直線から外れそうになる。

「エラー検知。修正を実行します」

オルフェウスの声が鋭く響き、烈司の足を再び前へ押し出す。

だが烈司は唇を噛み、血の味を確かめた。

——罪は消えねえ。失敗も消えねえ。

——けど、それでも。

拳を握りしめ、叫んだ。

「信じる方に倒れる。それでいい!」

その瞬間、意識空間に赤い光が走った。

瓦礫の中で拾った壊れた羅針盤が現れる。

針は震え、北を指さない。

だが今度は——遥斗と真白の方角を、真っ直ぐに指した。

「GO——!」

烈司の叫びと共に、直線の床が亀裂を走り、道が強引にこじ開けられる。

白銀の世界に“寄り道”が生まれた。

拳を振り抜いた烈司の姿は炎のように燃え、背中に夜空の星々が広がっていく。

「ノイズ強度……規格外……処理不能……」

オルフェウスの声が揺れる。

遥斗と真白のリズムに、烈司の心拍が加わった。

低く響く重低音のように、三者の拍が重なる。

半拍の遅れ(遥斗)、旋律(真白)、そして烈司のドラムの拍。

意識空間に、三重奏が鳴り響く。

——その音は、他の器たちの眠る意識を揺さぶり始めていた。

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第4章:前編|後編

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