遺した足跡 – 前編

第三話 『カメラが残した時間』

次の依頼は、緑豊かな街の一角にある小さなアパートからだった。故人の名前は田中雅之、彼はかつて人々に愛された名カメラマンだった。


田中さんの部屋は一見するとただの汚部屋だった。しかし、その中には彼が一生を捧げたカメラと数え切れないほどの写真が散乱していた。

部屋中に広がるのは、彼が撮影した数々の写真。その中には、美しい自然風景や人々の笑顔、そして時には社会問題を切り取ったものもあった。

部屋を整理していく中で、田中さんがどれだけカメラを愛していたかが伝わってきた。彼は一枚の写真にすべてを込め、それを通して人々にメッセージを伝えていた。

田中さんが残した手紙には、「写真を通して人々に感動を与え、心を動かす。それが私の使命だ」と書かれていた。



しかし、田中さんの部屋の中には、彼の失望と挫折が刻まれていた。彼が最後に取り組んでいた大プロジェクトが途中で頓挫し、その後病に倒れたのだ。

私はその事実を知り、田中さんの心情を思い浮かべた。失敗が連続し、夢を諦めざるを得なかった自分自身の過去と重ねて見た。

私は田中雅之さんの遺品を整理し終え、遺族に渡した。その中には、未完成の大プロジェクトの構想図も含まれていた。

「お父さんの夢、私たちが叶えるよ」と遺族は淡々とした顔で言った。

私はその場を後にし、再び自分の人生を見つめ直すことを決意した。そして、この仕事を通して、亡くなった人々の愛、夢、挫折を垣間見ることで、自分自身の人生も再構築していくことを誓ったのだった。

 これが、私が遺品整理屋としての三つ目の仕事で得た、”遺した足跡”の物語だった。

前編 後編

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