遺した足跡 – 後編

第六話 『書物に秘められた哲学』

最後の依頼は、書物に囲まれた一軒家からだった。故人の名前は佐々木昭三、彼は一生を哲学に捧げた学者であった。


昭三さんの家には書物が溢れていた。床から天井までびっしりと本棚が並び、その多くが哲学書であった。

昭三さんが残した書物からは、彼が哲学にどれほどの情熱を注いでいたかを感じることができた。そしてその中に、彼が一生懸命に追求していた一つの哲学的命題があった。

その命題は非常に深淵で、一見すると理解しきれないものだったが、それは昭三さんが人生を通して探求していた真理を示していた。

昭三さんが残したノートには、「この命題を解き明かすことで、人々が自身の存在意義を見つめ直し、より豊かな人生を生きる手がかりを掴んでもらいたい」と書かれていた。



しかし、昭三さんの命題は彼自身の生涯を通じても解明されることはなく、彼はそのままこの世を去ってしまった。

私はその事実を知り、昭三さんの深い思索と挫折を思い浮かべた。それは、自分自身の過去と重なり、深い共感を覚えた。

私は佐々木昭三さんの遺品を整理し終え、遺族に渡した。その中には、未解明の命題の記録も含まれていた。

「父が残したこの命題、私たちが解き明かすよ」と遺族は淡々と誓った。

私はその場を後にし、再び自分の人生を見つめ直すことを決意した。そして、自分が選んだこの仕事を通して、亡くなった人々の愛、夢、挫折を垣間見ることで、自分自身の人生も再構築していくことを誓ったのだった。

 これが、私が遺品整理屋としての六つ目の仕事で得た、”遺した足跡”の物語だった。

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