雨上がりの約束 – 前編

中学生の真央は、灰色の雲が重く垂れ込めるある雨の日に、孤独を求めて学校の屋上に上がった。雨粒が頬を伝う中、彼女は何か小さく震えるものを見つける。屋上の隅に、一匹の捨て犬がいた。犬は怯えきっており、その小さな体はビクビクと震え、人間を警戒する瞳で真央をじっと見つめていた。

真央はゆっくりと犬に近づき、優しい声で「大丈夫だよ、怖くないからね」と話しかけた。しかし、犬は依然として警戒心を解かず、小さく唸り声を上げた。真央は自分の傘を広げ、雨から犬を守るように傘を差し出した。しばらくの間、真央は犬との距離を縮めようと静かに待った。やがて犬は少しずつ真央に近づき、ついには彼女の足元に身を寄せた。

その日、真央は犬を自宅に連れて帰る決心をした。彼女は犬を傘の中に入れ、自分の制服で犬を優しく包み込んだ。家に着くと、真央は両親に犬のことを話した。当初、両親は反対した。「こんなに急にペットを飼うなんて無理だ」と父親は言い、母親も「誰が世話をするの?大変よ」と心配そうに付け加えた。

しかし、真央は犬に対する強い思いを両親に伝えた。「この子は、私が屋上で見つけたの。誰もいなくて、本当に寂しそうだったんだ。この子には家が必要なの。私が世話をするから、お願いだから」と懇願した。真央の熱意に触れ、両親は渋々ながらも承諾した。ただし、一つ条件があった。「真央がこの犬の全ての世話をすること」と。

犬は新しい環境に徐々に慣れ、真央の家族にとっても大切な存在となっていった。真央は犬に「雨」と名付けた。名前の由来は、彼らが出会ったあの雨の日から。雨との毎日は、真央にとってかけがえのない時間となり、学校での孤独感を和らげる唯一の慰めとなっていった。

雨は真央の帰宅をいつも玄関で待ちわびており、真央が家に入ると歓喜の舞を踊った。二人(一人と一匹)の関係は日に日に深まり、真央は雨と過ごす時間がなければ生きていけないほど、雨を愛するようになった。

ある日、学校からの帰り道、真央は雨と一緒に公園で散歩をしていた。雨は元気に草の上を駆け回り、真央はそんな雨の姿を見て心からの笑顔を浮かべた。その時、真央はふと感じた。雨との出会いが、彼女の生き方を少しずつ変えていることに。雨がいることで、真央は自分自身にもっと自信を持つようになり、孤独感を感じることが少なくなっていたのだ。

この出会いは、真央にとってただの偶然ではなく、運命のようなものだった。雨と共に、彼女はこれからの日々を乗り越えていく勇気を得ていた。そして、真央は知っていた。これから先、彼女を待ち受ける試練があったとしても、雨がそばにいれば、どんな困難も乗り越えられると。

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