アイのかたち

静かな田舎町、花が咲き乱れる季節。拓海はその町の小さな花屋で働いていた。彼の優しい性格と花への情熱が、訪れる人々に微笑みをもたらしていた。しかし、心の奥底には静かな孤独が隠れていた。

ある日、拓海の仕事場に、一人の元気な少女、あかりが訪れた。彼女は成人している両親に放置されることが多かったが、それでも明るい笑顔を絶やさず、花屋に入ってきた。拓海はその笑顔に心を奪われ、少しずつ彼女との距離を縮めていった。

「こんにちは、大きなお花がほしいの!」 あかりの声はピュアで、しゃべり方も弾んでいる。

「何のお花がいいかな?あかりはどんな花が好き?」拓海は柔らかい声で返した。

「うーん、ひまわりが好き!太陽みたいで元気になるから!」

その瞬間、拓海はあかりの元気さに心が暖かくなるのを感じた。彼女は拓海の店で何度も訪れるようになり、彼らは心を通わせていくことになった。

拓海はあかりに花の手入れや育て方を教えた。あかりも、拓海に自分自身を大切にすること、好きなことをやることの大切さを教えた。二人の間には、空気のように自然な信頼関係が築かれていった。

あかりは毎回違った質問をし、拓海の仕事の手伝いをしながら、徐々に自分で花を育てる楽しさを知っていった。彼女の成長は、拓海にとっても喜びだった。お互いに支え合いながら、ゆっくりと伸びていく関係は、まるで花が育つようであった。

そんなある日、あかりが悲しげな表情で拓海の前に立った。

「拓海さん、私の家が東京に引っ越すことになったの…」

その言葉を聞いた瞬間、拓海は胸が締め付けられる思いをした。彼自身も気づかぬうちに、あかりとの別れがとても悲しいものであると感じていたからだ。

「そうなんだ…。みんなで札幌に行くのかな?」拓海は問いかけながら、心の中ではどうしていいかわからなかった。

「あかり、引っ越す前にもう一度、最後の花束を作ろう!」拓海は提案した。あかりの顔が一瞬明るくなるのを見た。

彼らは一緒に、あかりが大好きなひまわりをいっぱい使った豪華な花束を作り上げた。花の良い香りが彼らを包む中、その瞬間を楽しんだ。最後の日に、二人はたくさんの思い出を共有し、笑顔をこの町に残した。

別れの時、あかりが涙を流しながら言った。「拓海さん、忘れないよ!いつでも会えるって信じてるから!」その言葉を聞いた拓海は、お別れの痛みを抱えながらも、彼女の言葉を心に刻んだ。

数週間が過ぎ、拓海はどうしてもあかりのことが忘れられなかった。彼は決意する。「あかりに会いに行こう、東京へ!」それは彼にとって勇気ある決断だった。

その日、拓海は東京行きの切符を手にした。すべてが新しい場所で、どのようにあかりを見つけることができるのか不安だったが、彼は自分の気持ちを信じることができた。あかりの笑顔が彼の心の中を照らしていたからだ。

東京に着いた拓海は、あかりが住んでいる場所を調べ、彼女の新しい学校を訪れた。友人の助けを得て、あかりが休み時間に出てくるのを待った。ドキドキとした気持ちを抑えて、やがて彼女が現れた。

「あかり!」拓海の声が響く。

あかりは驚いた表情から、瞬時に嬉しそうな笑顔へと変わった。「拓海さん!本当に来てくれたの!?」

その瞬間、二人は懐かしさと喜びが混ざり合った温かい雰囲気に包まれた。悠久の時間を経たように、彼らの絆は変わらず強かった。

「私は絶対に忘れないから、きっと会いに来るって約束してたから…」拓海は満面の笑顔で答えた。

二人は手をつなぎ、今後の未来に希望を抱きながら再会を楽しんだ。拓海はあかりに花を贈り、ふたりで花を育てる夢を語り合った。東京でも、あかりの笑顔は町を明るくしてくれる大切な存在だった。彼らの笑顔はやがて広がり、街全体が幸せな空気に包まれた。

拓海とあかりは、いつまでも互いを思い、無限の友情を育んで行くことになる。

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