震える指先で封を切ると、そっと広がる手紙の紙面に、淡いインクがにじむ。そこにはただ、二行の言葉だけが綴られていた。
――桜へ。
――あなたを守りたくて、遠くから見守っています。
――星の涙を探して。
その一行で、桜の視界は一瞬にして揺らいだ。胸の奥でずっと渇いていた「何者かに届きたい」という想いが、熱い波となって押し寄せる。母かもしれない人のぬくもりを感じたと同時に、「星の涙」という謎に胸が高鳴った。
はしに寄せた木箱に背を預け、桜はそっと瞳を閉じた。浮かぶのは、夜空に瞬く光と、その光を支える誰かの優しさ。涙がひとすじ、ほおを伝い落ちる。箱の向こうで、遠く子どもたちの笑い声がこだまする。
――探さなければ。私の物語は、ここから始まる。
そう心でつぶやき、桜は手紙を大切にポケットへしまった。倉庫の埃が静まる中、未来への一歩を踏み出す音だけが、屋根裏に静かに響いていた。



















