星のささやき

リナは、魔法と星が共存する美しい村で生まれ育った。彼女はその村で唯一の星喰いの血を継ぐ少女であり、幼い頃から星の光に魅了されていた。小さな手を伸ばして、夜空の星々を指差すことで、星たちと会話を交わすことが日常だった。彼女の笑顔は、明るい星のように周囲の人々を照らしていた。しかし、リナの命は星の輝きと密接に結びついていたため、彼女が星を求めることは、村にとっての運命を左右するものであった。

ある静かな夜、リナはふと流れ星が空を駆けるのを目撃した。その流れ星の美しさに心を奪われた彼女は、自分の命を永遠に保つために、その星を食べる決意をした。「星を食べたら、私の命はずっと続くの?」と、小さな声で自分に問いかける。リナはその時、何が待ち受けているのか知らなかった。

星を食べるという行為には、大きな代償があった。流れ星を口にした瞬間、彼女はその星が持つすべての記憶と感情を飲み込んでしまった。星が最後に願ったこと、それは誰も知らない無念の思いだった。その星を食べたことによって、リナはその願いを背負うことになったのだ。

最初は、乾いた空に浮かぶ星々の記憶は、リナの心に静かな感動をもたらした。彼女は、星が語りかける物語を楽しみ、星によって与えられた新しい力を誇らしく感じていた。しかしその感覚は、次第に変わっていく。

時間が経つにつれ、リナは食べた星の数だけ、無数の記憶と感情に埋もれていった。彼女の心には、喜びだけでなく、悲しみと苦しみが押し寄せた。星々がかつて抱いていた願い、それは時に重く、時には刺すように彼女の心を蝕んだ。無邪気な笑顔は徐々に失われ、村の人々は彼女から距離を置くようになった。それを見る彼女の心は、また新たな痛みを抱えてしまう。

「どうして私だけが、こんな思いをしなくてはいけないの?」リナは自問自答する。孤独感が彼女を包み込み、一緒に遊んでいた友達の声も、家族の温もりも、次第に色褪せていった。村の広場で遊ぶ子供たちを遠くから見つめる、リナの目には涙が浮かぶ。

それでも、彼女は星々が自分を必要とする存在だと信じ続けた。流れ星を待ち続け、新たな星を食べることで、自らの命を繋ぎ止めようとするのだ。しかし、次第に彼女の身体は星の記憶と悲しみの重圧に押し潰されていく。彼女はもう、ただの子供ではなくなっていた。心に抱える星の数だけ、彼女は大人になってしまっていたのだ。

最後には、リナは残りの星をすべて喰らい尽くす。するとどうだろう、彼女は瞬時に失ったものを理解した。すべての星の記憶が、彼女の心を満たしていた。しかし、それでも彼女に残ったのは、村人たちの苦しみだけだった。彼女は、星々の輝きを奪う代わりに、彼らの痛みを引き受けてしまったのだ。

そして、星を飲み込み尽くしたその瞬間、リナは自分自身のことも忘れてしまった。彼女の心には、星たちの思い出と願いばかりが残り、自分という存在が消えかけていた。彼女の選んだ道は、無邪気さを重んじる代償として、孤独と悲劇をその懐に抱えるものであった。

村人たちは、リナの変わり果てた姿を見て、戻りたくとも戻れないことを感じ、彼女との距離を一層広げてしまった。彼女は、消えた星のように、かつての自分を失い続けた。無邪気であった頃の思い出さえも消えてしまって、彼女の心には暗い余韻だけが残った。

リナは、流れ星たちが怒り泣く声が聞こえる夜空の下で、彼女自身の存在を忘れたまま、不幸と孤独な人生を歩むことになった。こうして、星のささやきは彼女に永遠に試練を与え続ける。

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