おばけのプレゼント

村の外れにある古びた家。

そこには、長い白髪を持つおばあさんが一人で住んでいた。村の人々は彼女を恐れ、「おばけ」を呼び寄せる存在だと噂していたが、毎週ごとにその家を訪れる子供がいた。

その名はさくら。8歳の元気な女の子で、彼女はおばあさんの優しい笑顔と、美味しいお菓子に誘われて、いつも遊びに行くことが楽しみだった。

おばあさんの家へ到着するたび、さくらは大きな声で「こんにちは!」と叫び、ピンク色のドレスを揺らしながら玄関を駆け上がった。

ある日のこと。
おばあさんは、さくらに小さな箱を手渡した。「これは妖精が住んでいる箱じゃ。中を開けてもいいが、願い事をするときは注意が必要じゃよ。」

さくらはその言葉を無視し、心の中に様々な願い事を思いついた。彼女はその箱に触れ、「お友達がもっと遊んでくれますように!」と心の中で願った。

すると、箱から微かに「わかった……」という声が聞こえた。驚きながらも、さくらはその声にワクワクしていた。ついには、次々と友達を呼び寄せることができた。みんなが彼女の家に遊びに来るのが嬉しく、彼女の幼い心は満たされていった。

しかし、願い事が叶うにつれ、次第に奇妙な出来事が村で起こり始めた。
まずは、さくらの友達のひとり、まゆが、遊んでいるときに突然転んで、腕を骨折してしまった。

「これはどうしたことだろう?」

さくらは心に小さな不安を抱くようになったが、その後も彼女は「もっとたくさんの友達が欲しい!」と願い続けた。

次に、友達のじゅんが、遊び場で急に失神をしてしまった。さくらは、それが自分の願い事に関係しているとは考えられなかった。

箱の声は次第に大きくなり、さくらの耳に不気味な囁きが響き渡る。「もっと願え……もっと願え……」

その声に応えるように、さくらは本当のことを知ろうとはせず、無邪気な心でさらに願うことを続けた。やがて、その声はさくらの心の奥深くにまで浸透していった。

村の雰囲気は次第に重苦しくなり、不安が広がっていった。

友達が次々に病気にかかり、怪我をし、場合によっては事故に巻き込まれてしまった。

さくらの心は、次第に恐怖で満ちていった。「どうして?私の願いが……」

彼女は不安に駆られ、ついにおばあさんの元に助けを求めることにした。「おばあさん!私の願いが友達を傷つけているの?」

しかし、おばあさんはあくまで穏やかな笑顔を崩さなかった。「さくら、箱は開けてはいけない。願い事をするということは、代償を払うことだということを忘れないで。」

さくらは混乱した。なぜなら、彼女はただみんなと一緒に遊びたかっただけだったからだ。箱の存在が、彼女に何をもたらしたのか理解ができず、その言葉の意味も深く考えることができなかった。

そして運命の日が訪れた。さくらはついに箱を開ける決心をした。恐れと期待が入り混じる中、指先で精緻な装飾を施された蓋を持ち上げた。

しかし、箱の中にはおばけが潜んでいた。暗闇の中から、彼女は目に見えない形で出てきた。その姿はさくらが思い描いていた可愛らしいものではなかった。どこか不気味で、彼女の心を凍りつかせるような存在だった。

その瞬間、さくらは自分の無邪気さが奪われていくのを感じていた。箱の中から飛び出したおばけは、彼女の心を侵食し、無邪気な笑顔を消していった。

村は静まり返り、さくらの笑い声は二度と戻らなかった。彼女は永遠におばけとなり、村の片隅からただ聞こえる声だけを残して、みんなの願い事を受け入れ続けることになった。

その声は、孤独の中での叫びだった・・・・・・

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