遺した足跡 – 後編

前編 後編

第四話 『未来へのメロディ』

次の依頼は、都会の喧騒から離れた郊外の一軒家からだった。故人の名前は小島和子、彼女はかつて音楽教師として多くの子供たちに音楽の楽しさを教えていた人物だった。


和子さんの家は老朽化していたが、中には古いピアノが鎮座していた。壁には彼女が教えた子供たちからの感謝の手紙や写真が飾られ、彼女の生涯を物語っていた。

和子さんが残した楽譜の束からは、彼女が音楽への深い愛情を感じた。そしてその中に、彼女が子供たちに教えていた一つのメロディがあった。

そのメロディはとてもシンプルだったが、心に残るものがあった。和子さんが残した手紙には、「このメロディを通じて、子供たちが音楽の楽しさを知り、その中に夢や希望を見つけて欲しい」と書かれていた。

私はそのメロディを眺めながら、和子さんがどれほど音楽教育に力を注いでいたかを理解した。しかし、和子さんの願いは全うされることなく、彼女は病でこの世を去ってしまった。



そんな中、私が和子さんの部屋で見つけたのは、彼女が最後に作り上げた一つのメロディだった。それは未完成のままで、完成することなく彼女が亡くなってしまった。

私はそのメロディを手に取り、彼女の苦しみや挫折を感じた。それは、自分自身の過去と重なり、深い共感を覚えた。

私は小島和子さんの遺品を整理し終え、遺族に渡した。その中には、未完成のメロディも含まれていた。

「母が残したこのメロディ、私たちが完成させるよ」と遺族は淡々と誓った。

私はその場を後にし、自分の過去と向き合うことを決意した。そして、自分が選んだこの仕事を通して、亡くなった人々の愛、夢、挫折を垣間見ることで、自分自身の人生も再構築していくことを誓った。

 これが、私が遺品整理屋としての四つ目の仕事で得た、”遺した足跡”の物語だった。

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