終焉の序曲 – 第1話

エピソード2: “監視の網”

ダリスの経済繁栄が続く中、エヴァロスの恐怖と疑念は深まるばかりだった。彼の頭の中では、常に裏切り者が自分を狙っているという思いが蠢いていた。そんなエヴァロスの心情が次第に現実の政策に反映されていく。

国内の監視体制が強化され、国民の一挙手一投足が厳しく監視されるようになった。街頭には防犯カメラが増設され、国民の通信はすべて監視の対象となった。さらに、エヴァロスの指示により、一部の国民に対しては特別な監視が行われるようになった。彼らは社会的な影響力を持つ人々や、過去にエヴァロスの政策に対して批判的な意見を述べた者たちだ。

エヴァロスはまた、思想の統制も強めた。教育の現場では、エヴァロスの政策を賞賛する教材が使われ、エヴァロスの思想を子供たちに植え付けるようになった。報道機関もエヴァロスの手により統制され、エヴァロス批判の声は消えていった。

しかし、エヴァロスのこれらの行動は、一部の国民の間で不満を生み始めた。彼らは自由な思考や発言の自由を奪われていると感じ、エヴァロスの統治に対する疑念を深めていった。特に、エヴァロスの特別な監視対象となった者たちは、エヴァロスの統治に対して公然と批判的な姿勢を示し始めた。

その中には、ダリスの元首相であり、エヴァロスの昔の仲間でもあるクライス・ベネディクトも含まれていた。クライスはエヴァロスとともにクーデターを成功させた一人だが、エヴァロスの独裁的な統治に反対する立場を明確にしていた。彼はエヴァロスの監視下に置かれつつも、エヴァロスの統治に対する批判を続けていた。

一方、エヴァロスは自分の権力を守るため、また、国民の反抗を抑え込むために、先進的な兵器を開発し続けていた。しかしこの事実は、彼の側近たちしか知らない。国民の目には、エヴァロスの政策はあくまで経済発展を目指すものとして描かれていた。

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