大空の船 – 第5章 後編

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高高度の空気はまるで水晶のように透明で、視界がどこまでも澄んでいる。しかし、その冷たさと乾燥は、アルバトロスの乗組員たちにじわじわと体力を奪う負担でもあった。息苦しさを感じながらも、アレンたちは前方にかすかに浮かぶ巨大な建造物らしき影を目指す。そこが“空中都市”の正体だと確信するにはまだ距離があったが、これまで見たどの浮遊島とも違う威圧感に、クルーは興奮と不安を隠せないでいる。

「リタ、エンジンの調子はどう? 燃料もそろそろ気になるけど」

甲板から操縦席へと歩み寄ったアレンが、ふと後方を振り返りながら問いかける。リタは短く息をつきつつ、「ギリギリ持ちこたえてるわ。もうあまり無茶はできないけど、あと少しなら高度を保てそう」と報告した。エンジンの負荷を最小限に抑えるため、船内の電力や加熱装置は抑え気味にしており、そのせいで寒さと戦う乗組員たちは若干こごえている。

「あと少し……どれくらいだろうな、あの都市まで」

ライナスが風にあおられそうになりながら望遠鏡を覗いている。地図にも載っていない高高度域だけに、いくら彼が豊富な冒険経験を持っていてもまったく予測がつかない。

「高さ的には、もう最大級の雲海を越えてるはず。あそこに見える影の裏側が、本当に都市になってるなら……」

アレンは軽く唇を噛みながら、その巨大な輪郭へ視線を注ぐ。遥か先にある石造りの柱のようなものが、淡い光の筋を浴びながら静かに浮かんでいるように見える。下部は濃い霧で覆われ、はっきりした全貌はまだ見えないが、人工物であることは間違いなさそうだ。

「ラウル、微妙に風が変わってきたね。流されないように舵を修正したほうがいいかも」

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