大空の船 – 第1章 後編

第1章:前編|後編

陽射しが少しだけ傾きはじめた午後の町角で、アレンは古びた工房の扉を前に立ち尽くしていた。扉は頑丈そうな木製で、金属の鋲や取っ手がやけに重厚に見える。何より、外壁には町の家々にはない奇妙な管や配線の跡が見え、いかにも「ここがあの噂の発明家の住処だ」と言わんばかりの雰囲気を漂わせている。以前から「変わり者の発明家が暮らしている」と耳にしていたが、実際に訪ねるとなると肝が据わらない。アレンは何度も意を決して扉を叩こうと手を伸ばし、結局引っ込める。そうしているうちに、じわじわと日が傾いていくのがわかった。

「もう帰ろうかな……」

小さく息をついて、踵を返しかけたとき、不意に金属がこすれるような音がした。扉が軋みながら、少しだけ開いたのだ。そこから覗いたのは、ぼさぼさの髪と厳つい眉が印象的な老人の顔。年齢はかなり上のはずだが、その目には鋭い光が宿り、ただ者ではない雰囲気を醸し出している。アレンは一瞬ぎょっとして、思わず身構えた。

「なんだ、子どもか。何の用だ?」

老人は低い声でそう問いかける。アレンの姿をじろりと見下ろしながらも、どこか警戒している様子だ。アレンは少しだけ後ずさりしつつも、「あの、あなたがこの工房をやってる発明家さん、ですよね?」とおずおずと切り出した。

「そうだが、それがどうした。見世物でもないぞ」

老人の語気は荒く、まるで追い返すような口ぶりだったが、アレンは失敗を恐れるよりも好奇心の方が勝っていた。幼い頃からずっと空を飛ぶことばかり考えていたが、ここ数日で彼の中の「やってみたい」という気持ちが一段と強くなっている。何とか一歩を踏み出さねばと思い、覚悟を決めたのだ。

「ぼ、僕……空を飛ぶ船を作りたいんです。それで、あなたの工房が色んな発明を試しているって聞いたんです」

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