ひと夏のお悩み相談所 – 第1話

第2章:最初の客、日焼けの幽霊

テントをビーチに設営したキョウコとユウキは、お悩み相談所の開店初日を迎えていた。朝早くから準備をして、カラフルなのぼりやポスターを立てて「お悩み相談、こちらへ!」とアピールしていた。しかし、正直、本当に誰かが相談に訪れるのかは分からなかった。

正午過ぎ、キョウコは椅子に座りながら波の音を楽しんでいた。すると突然、ひんやりとした風が吹き抜け、彼女の足元には透明な男の姿が現れた。その男は、かつてのサーファーで、彼の名はタロウだと名乗った。彼の身体は透明で、しかも明らかに日焼けしており、熱々の砂浜のようなオレンジ色をしていた。

「あのさ、困ってるんだ。」とタロウは言った。「もうこの世にはいないんだけど、日焼けが気になって仕方ないんだよ。」

キョウコは驚きつつもプロとしての態度で答えた。「日焼け止めや帽子はどうですか?」

タロウは苦笑いをした。「霊にはそういうのが使えないんだよ。それに、俺が日焼け止めを塗っても、透明なので見た目に変化はないんだ。」

キョウコは少し考え込んでしまった。確かに、霊に物理的な変化をもたらすのは難しい。しかし、彼の悩みは本当なので、何とかしてあげたいと思った。



「タロウさん、あなたが日焼けをしてしまった原因は何ですか?」キョウコが尋ねると、タロウはしばらく考えてから答えた。

「サーフィンが好きで、いつも太陽の下で波に乗っていた。日焼けを気にすることなく、海との時間を楽しんでいたんだ。」

キョウコはそっと言った。「その時の喜びや楽しみ、それはあなたの内面の輝きとして残っているはずです。外見の日焼けよりも、その内面の輝きを大切にしませんか?」

タロウは驚いたような表情をしたが、しばらくの後、優しく微笑んだ。「確かに、サーフィンの時間は最高だった。それを大切に思い出として持つこと、それが一番だね。」

キョウコはうなずきながら、「自分の過去の選択や経験を受け入れ、前に進むことが大切です。タロウさんの中には、美しい思い出や経験が詰まっています。それを誇りに思い、自分らしさを大切にしてください。」

タロウは感謝の言葉を伝え、キョウコのもとから去っていった。彼の後ろ姿は、夏の砂浜のように輝いて見えた。

キョウコは、初めての客との対話を終え、心の中で小さな喜びを感じていた。ユウキは遠くから二人の様子を見守りながら、キョウコの成長を優しく見守っていた。

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