第3章:恋するマーメイドの悩み
午後、キョウコのテントの前には、透明な青い水の玉が浮かんでいた。その中から美しいマーメイド、ミオが姿を現した。彼女の髪は深い海の色を思わせる青く、鱗は太陽の光を反射してきらきらと輝いていた。
「あの…お悩み相談、受けてもらえますか?」と、彼女は少し緊張した様子でキョウコに尋ねた。
キョウコは驚きながらも彼女を招き入れ、「もちろん、どんなことでお悩みですか?」と答えた。
ミオは深く息を吸い込み、「実は、陸上の男性、ケンジさんに恋をしてしまって…。私、彼と一緒になりたいんです。でも、陸上の生活や恋愛には全く不慣れで、どうアプローチすればいいかわからないんです。」と打ち明けた。
キョウコは考えながら言った。「人間の恋愛は複雑で、いろんな形があります。でも、一つの方法として、恋愛映画を見て、人間の恋の形を学んでみるのはどうでしょうか?」
ミオは興味津々で、「恋愛映画?」と繰り返した。キョウコは彼女にいくつかの恋愛映画のタイトルと、そのあらすじを紹介した。ミオは特に「ロミオとジュリエット」に強く引かれ、「これを見て、ケンジさんにアプローチしてみよう!」と決意した。
数日後、キョウコはビーチでサンセットを眺めていると、遠くでミオとケンジの姿を見つけた。ミオはケンジの前で、ロミオとジュリエットのような情熱的な告白を試みていた。しかし、突然ミオは背中から出ている鱼の尾を振り回し、誤ってケンジを海に突き落としてしまった。
慌てたミオは、ケンジを助け上げながら、泣きながら謝り続けた。ケンジは驚きつつも、ミオの真摯な気持ちに触れ、二人は笑いながら海辺を歩き始めた。
キョウコはその場面を見て、映画の中の恋愛と現実は違うことを再認識し、心の中で二人の未来を応援した。
その夜、ミオはキョウコのテントを再び訪れ、「恋愛映画のアドバイス、ありがとうございました。ちょっとハプニングはありましたが、ケンジさんともっと仲良くなれたと思います。」と感謝の言葉を伝えた。
キョウコは笑顔で、「大事なのは映画のシーンを再現することではなく、自分の気持ちを正直に伝えること。ミオさんがそれをできたから、今日の結果が得られたんですよ。」と答えた。
ミオはうなずきながら、「本当にありがとうございました。」と言い残し、青い水の玉の中に姿を消していった。キョウコはその日、恋に生きる勇気の大切さを再び感じたのだった。