タカシがリモートワークを導入してから数日が経った。最初は慣れない環境に戸惑いながらも、何とか仕事を続けていたが、次第に社員たちの間でタカシの異変が話題に上り始めていた。彼の行動は以前と比べて明らかに奇妙だった。特に、副社長でタカシの右腕を務める小田は、その異変に敏感に反応していた。彼は長年タカシと共に働いてきたため、社長のいつもと違う態度にすぐに気づいていた。
「最近、社長の声が少し低くなってる気がしませんか？」と、ある日リモート会議後のオンラインチャットで社員の一人がつぶやくと、他の社員たちも同意し始めた。「確かに、前よりも少し重い感じがする」「カメラのアングルもおかしいよな。顔がちゃんと映ってない時があるし…」「もしかして、体調が悪いのかな？」と、次々に疑問が投げかけられた。特に小田は、タカシの照明がいつも暗く、彼の顔色が異様に悪いことに気づいていた。
「社長は大丈夫だろうか？」と小田は自分に問いかける。しかし、タカシの厳格な性格を知っている彼は、軽々しくそのことを聞くわけにもいかず、様子を見守ることしかできなかった。一方で、会議中にタカシがカメラを突然オフにすることが増え、謎の音がマイクに拾われることも多くなってきた。ゴソゴソという音や、まるで何かを咀嚼しているかのような音が聞こえてきて、社員たちの間で「社長、何か隠しているんじゃないか？」という疑念が広がり始めた。