東京の小さな衣料品店「チュチュスとソース」を営む陽菜は、いつも明るく人懐っこい性格で、訪れるお客さんの心を癒していた。彼女は24歳、毎日店を開けては、自分のセンスで選んだ可愛い服を揃え、流行りのデザインを見せることで、地域の人々に愛される存在になっていた。
しかし、そんな彼女の日常は、ある日突如として訪れた客によって変わることになる。
その日、午後の柔らかな日差しの中、陽菜は店内の棚を整理していた。すると、ドアベルの音が鳴り、振り返ると奇妙な格好の男性が入ってきた。大きなエビの着ぐるみを着ており、その姿は一瞬頭が混乱するほどだった。 「こんにちは!」陽菜は驚きながらもいつものように明るく微笑んだ。「この衣装で何かイベントがあるのですか?」
彼は少し照れくさそうに頷き、「実は、私は『えびぼー』というキャラクターなんです。この着ぐるみに特別なパワーがあるんですよ」と語った。彼の言葉に興味を惹かれた陽菜は、それがどのようなパワーなのか尋ねた。
「このパワーを使って街を盛り上げるイベントを企画したいんです。それが『エビ祭り』です!」彼の言葉に、陽菜は思わず「エビ祭り、面白そう!」と心が躍った。この瞬間から、彼女の平凡な日々が一変することになる。
陽菜はエビぼーと共に様々な奇想天外な広報活動を始めた。街を巡り、エビ祭りの宣伝を行う過程で、さまざまなトラブルが次々に起こった。例えば、ある日、チラシを配っていた時、カラスにチラシを奪われ、必死に追いかけたこともあった。また、看板を設置する際、重さに耐えきれず看板が倒れてきて、思わず陽菜の頭に直撃する場面もあった。
「痛い、でもこれも思い出!」陽菜は笑い飛ばしながら、エビぼーと共に次の作戦を練った。
祭りの日が近づくにつれ、陽菜は町の人々と絆を深めていった。エビぼーのユニークなキャラクター性も相まって、その名は口コミで広がり、周囲から期待の声が上がった。そして、エビ祭りの当日、町には多くの人々が集まり、にぎやかな雰囲気に包まれた。
イベントは大盛況で、陽菜は大きな成功を収めた。笑顔で参加者たちを迎え、エビぼーとの絡みも楽しいひとときとなった。小さなお店から生まれたこのお祭りは、ついに町の名物イベントとなり、景気も上向きになっていった。
しかし、同時に陽菜は次の一手を考え始めていた。エビ祭りの成功で自信を持った彼女は、さらなる活動をしたいと感じていた。
そんな中、エビぼーが陰る表情で陽菜の元へやってきた。「実は、私はある大手食品会社のマーケティング責任者なのだ」と告白した。陽菜は驚き、しばらく言葉を失った。
「あなたたちの努力を見て、純粋な楽しさが人々を結びつけるのだと実感しました。しかし、私はこのイベントを続けることはできません。」
一瞬、陽菜の心が沈んだ。しかし彼は続けてこう言った。 「あなたの真の力は、笑顔そのものだよ。言葉にすることができないこのパワーを、どうか大切にしてほしい。」
彼の言葉を受け取った陽菜は、それが彼からの別れの言葉だと理解した。祭りは終わりを迎え、彼が去った後、陽菜は寂しさを感じながらも、自分ができることを考え始めた。
そして、数ヶ月後、陽菜は「笑顔推進委員会」を設立し、エビ祭りを毎年開催することにした。彼女のユーモアと元気が、町の人々を結びつけていく。
エビぼーとの出会いによって、彼女の日常は変わり、笑顔がもたらす力に気づかされた。この新たな活動は彼女にとっても、町にとっても、新しいスタートとなった。