第1章: 珍訪客の始まり
普段の朝は、ペットショップ「ミユキの小さな天国」で始まる。鳥のさえずり、犬のわんわん、ネコののど自慢。そんな賑やかな音色に混じって、ミユキは店を開ける準備をしていた。今日も一日、動物たちと楽しく過ごす予定だ。
しかし、この日は何かが違った。ハムスターのケージを覗き込むと、いつものようにハムちゃんが車輪を回しているはずが、そこにはただの空間があるだけだった。ミユキは不安に駆られ、店内を探し始める。そして、その時、彼女の目の前に信じられない光景が広がった。
ケージの前には、透明でちらちらと光る小さな姿が。ミユキの愛しいハムスター、ハムちゃんが幽霊となって現れたのだ。ひとまずの驚きを抑え、ミユキはハムちゃんに話しかけてみる。
「ハムちゃん、どうしてここにいるの？」
幽霊ハムスターは、小さな声で答えた。
「ミユキさん、僕、最後の願いが叶えられるまで、ここを離れられないんだ。」
ハムちゃんの願いは、なんと巨大なチーズの山を一度でいいから登りたいというものだった。ミユキは苦笑いしながらも、この小さな友だちの願いを叶えてあげることを決心する。
彼女はすぐに行動に移った。近所のスーパーマーケットで買いだめしたチーズを使い、店の一角に小さなチーズの山を作り始めた。ミユキは一つ一つ丁寧にチーズを積み上げていく。周りにいた他のペットたちも、この不思議な作業に興味津々で見守る。
ついに、ミニチュアながらも立派な「チーズ山」が完成した。ハムちゃんの目はキラキラと輝いていた。ミユキは優しく微笑みながら、ハムちゃんをその山の下に置く。
「さあ、ハムちゃん。君の冒険が始まるよ。」
ハムちゃんは一歩一歩、勇敢にも山を登り始めた。途中で滑りそうになりながらも、彼は諦めず、ついに頂点に到達する。その瞬間、ハムちゃんの体から発せられる光はより一層強くなり、そして、満足そうに微笑みながら、静かに消えていった。
ペットショップの中には、感動の拍手が起こる。動物たちも人間のようにその勇敢なハムスターを称えた。そして、ミユキは心からの笑顔を浮かべながら、ひとつの小さな魂が平和に旅立ったことを祝福した。
この日以降、「ミユキの小さな天国」では、亡くなったペットたちが時折、彼らの未練を解消するために現れるようになった。ミユキはその都度、彼らの願いを叶えるために、様々な奇跡を起こし続けた。
そしてミユキは理解した。ここはただのペットショップではなく、愛と奇跡が生まれる場所、「ペットの天国」だと。
