従魔の心 第1章: 従魔の誕生

第1話: 森の出会い

村の外れに広がる古びた森の中、若きカイはいつものように探検を楽しんでいた。彼の好奇心は尽きることがなく、森の奥深くまで足を進めていった。春の息吹が木々を優しく揺らし、鳥たちの囀りが空気を満たす中、突然、カイの耳に異変が飛び込んできた。小さな悲鳴のような音が、樹木に反響していたのだ。

音のする方へと足を早めるカイ。草木が生い茂る中、彼が見つけたのは、石と木の枝で作られた粗末な罠にかかった小さな狐だった。その体は小さく、茶色の毛が密に生えた美しい狐。しかし、怯えと痛みで体を震わせ、カイの存在を警戒していた。

「大丈夫だよ、怖がらないで。助けるからね」とカイはそっと言葉をかけながら、ゆっくりと狐に近づいた。狐は一瞬、動きを止め彼を見つめ返す。その目には明らかな恐怖が宿っているが、どこかで信じようとする気持ちも見えた。

カイは慎重に罠を解除し、狐を自由にした。足には明らかな傷があり、血がにじんでいる。彼は服の端で優しくその傷口を拭い、狐を抱えて家へと急ぐことにした。

家に到着すると、彼の祖母が驚いた様子で迎えた。「どうしたの、カイ?その子は…」

「森で見つけたんだ。罠にかかってて、怪我をしてるから、手当てをしなくちゃ」とカイは説明し、狐をそっと床に下ろした。