光輝の運命

小さな村に暮らす若き少年、光輝(こうき)。彼は何の変哲もない日々を送っていた。しかし、彼の内には冒険への強い憧れが秘められていた。村の外れにある禁忌の森、その名の通り、この場所に足を踏み入れる者は誰もいなかった。だが、光輝はその禁断の地への好奇心を抑えきれず、森の中へと足を踏み入れてしまった。

森に入ると、周囲は一変した。静寂と陰鬱な雰囲気が漂う中で、彼は一つの影を見つけた。それは、古の魔女だった。彼女は長い白髪を持ち、ひどく衰弱した姿をしていた。光輝は一瞬怯んだが、彼女の目の奥に秘められた悲しみを感じ取り、心を動かされた。

「助けて……」魔女は呟いた。「私は呪いに囚われている。どうか、私を解放してほしい。」

光輝はその声に引き寄せられるように、彼女の元へと進み寄った。彼女の話を聞くうちに、彼は彼女の苦しみを理解した。彼女は長い間、禁忌の森に閉じ込められ、孤独な日々を送っていたのだ。光輝は、彼女を助けることができるかもしれないと思った。

しかし彼女は言った。「私を解放するためには、あなたの大切なものを一つ手放す必要がある。」

光輝はその言葉に動揺した。彼にとって何が大切なのか、それはすぐに思いつくことができなかった。しかし、彼の心には村の人々への愛があった。彼は決意する。「私はあなたを助ける。私の命の一部を、あなたに捧げる。」

魔女は微笑んだ。それは冷たく、そして悲しげな微笑みだった。彼女の手から放たれた魔法は、光輝の中に流れ込み、彼の心を締め付けた。しかし、それと同時に、魔女は徐々に解放されていった。彼女の姿は明るく、見る見るうちに美しさを取り戻していく。だがその代償として、光輝は少しずつ自分が薄れていくのを感じた。

そして、森から戻った光輝。村は何事もないように静まりかえっていた。しかし、彼の心の中に秘めた痛みは消えなかった。そして次第に村に異変が起こり始めた。村人たちは悲しみに沈み、彼らの命は失われ、ほとんどの者が苦しみ、絶望に暮れていた。

光輝は自分の意思で魔女を助けたはずだったが、その結果が村を不幸にしてしまったことに心が締め付けられる思いだった。彼は魔女を助けたことで、何もかもを失ってしまったのだ。

光輝は自分がもはや存在していないかのように、村に立ち尽くしていた。周囲にはかつての賑わいがなく、ただ空虚な悲しみが漂っているだけだった。彼の記憶もまた、次第に色褪せ、彼の心は次第に暗闇へと飲み込まれていく。

村を傷つけたのは彼であったのか、彼が魔女を救ったからこそ村が滅びてしまったのか、答えのない疑念が彼を苛んでいく。彼はかつての親しい者たちの笑顔を思い出そうとするが、その光景は次第に消え去ってしまった。

「ごめんなさい……」光輝は呟く。彼は村人たちの痛みを背負うことになり、自らを責め続けていった。なぜ自分が魔女を助けようとしたのか、果たして彼女を助けることでどんな未来が待っていたのか、それを考えるたびに深い悲しみが彼を包み込む。

この森での選択が、彼自身の存在を消滅させる運命を引き寄せることになるとは、彼の心の奥には予感があった。しかし、彼は人々のために自己犠牲を選び取った。作られた希望が実体を失い、彼はただの存在になってしまった。

過去は全て朧げに消えてしまい、光輝の心に植えつけられた悲しみだけが残った。彼は村人たちの希望が詰まった場所で、永遠に悔恨の中に生き続けることとなるのであった。希望の光が失われてしまったその場所で、彼の祈りは届くことはなかった。

早くも村人たちの記憶も薄れていく。光輝の姿は消え、彼の存在はもはや誰の心にもなく、ただ暗闇だけが静かに流れていた。