歌う井戸 – 第壱話

二人は日記を持って村の長老に相談することにした。長老は村の歴史や伝説に詳しい人物であり、この事態を解決する手がかりを持っているかもしれないと考えたのだ。

長老の家を訪ねると、長老は驚きの表情を浮かべて二人を迎えた。「こんな日記があったとは…」

長老の話によれば、かつてこの村に櫻乙女という女性が住んでいて、その美しい歌声で多くの人々を魅了していたという。しかし、彼女が恋をした男性は、他の女性と結ばれることになり、そのショックで乙女は命を絶った。

「その後、乙女の霊はこの村で数々の奇跡や怪奇現象を引き起こしてきた。あの井戸も、乙女の霊の仕業かもしれない。」

陸と純は、乙女の魂を安らぎの場所へと導く方法を長老に尋ねると、特定の儀式を行い、乙女の歌を歌って彼女を鎮める必要があると教えられた。

「しかし、その儀式を行うのは簡単なことではない。乙女の魂がどれほどの怨念を持っているのか、それを考慮する必要がある。」

純と陸は、村人たちと共に儀式を行うことを決意し、その準備を始めることにした。

数日後、井戸の近くで儀式が行われることとなった。村人たちは手を取り合い、輪になって井戸を囲んだ。そして、陸が乙女の日記に書かれていた歌を歌い始めた。

歌声が林の中に響き渡る中、井戸の水面が揺れ始め、やがて美しい光が現れた。その光の中には、乙女の姿が浮かんでいた。彼女は微笑みながら陸と純に感謝の意を示し、その光と共に空へと昇っていった。

村人たちは、乙女の魂が天に昇る姿を見て涙を流した。そして、その日から井戸の近くでは美しい歌声は二度と聞こえることはなくなった。

純と陸は、乙女の日記を大切に保存し、その伝説を後世に伝えることを誓ったのだった。

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