歌う井戸 – 第壱話

乙女の伝説と消えた歌声

次の日、陸と純は学校での授業中も、前夜の歌声の出来事が頭から離れなかった。そして放課後、二人は再び深い林の井戸の元へ足を運び、その場所で歌声が聞こえるのを待つことにした。

時は過ぎ、夜の帳が下りる中、二人は昨夜のような歌声を待ちわびた。しかし、待てど暮らせど、その声は聞こえてこない。

「やっぱり昨夜は何かの偶然だったのかな?」純が肩を落として言った。

「でも、あの声は確かに…」陸は真剣な表情で答えた。

突然、陸は思い出したように祖母の家にあった、古い写真や手紙を思い出した。乙女に関する何かの手がかりがあるかもしれないと考え、純を誘って祖母の家へと向かった。

祖母の家は古く、多くの記録や品々が保存されている。しばらく探していると、一冊の古びた日記を見つける。その日記の表紙には「櫻乙女」という名前が記されていた。

「これは…」純は息を呑んで言った。

二人は日記のページをめくり、乙女の日々の出来事や、彼女の心の内を知ることができた。そして、日記の中盤に、乙女が恋をしていること、そしてその恋が叶わなかったこと、心の痛みと絶望が綴られていた。

そして、日記の最後のページには、乙女が自らの命を絶つ決意を固めたこと、そして最後に歌った歌の歌詞が書かれていた。その歌詞は昨夜、井戸から聞こえてきた歌声と完全に一致していた。

純は驚きの表情を浮かべて言った。「もしかして、あの井戸の中に…」

「乙女の魂がいるのかもしれない。」陸は目を細めて答えた。

タイトルとURLをコピーしました