歌う井戸 – 第参話

井戸の守護者

図書館を後にし、陸は心の中に新たな決意を秘めて村を歩き始めた。その最初の目的地は、文書に記された「乙女の墓」の場所だった。村の歴史や伝説を知る者として、陸の頭に浮かんだのは村の長老、蓮の存在だった。

蓮の家に到着すると、彼は既に陸を待っていたかのように玄関を開けていた。「陸、君が来ることを予感していたよ。」彼は微笑みながら言った。

陸は驚きながらも、「蓮さん、この村には本当に乙女の墓があるんですか?」と質問した。

蓮は深く頷き、「はい、それがこの私の庭にあるのだ。」と言って、庭へと案内した。庭の奥には小さな石碑が立っており、そこには「乙女の魂を安らかに」という言葉が刻まれていた。

「この乙女の歌声には特別な力が宿っていた。それが井戸の魔物を封印する力となり、村を救ったのだ。」と蓮は語り始めた。

「しかし、何故今、その封印が解け始めているのですか?」と陸は焦りを感じながら質問した。

蓮の顔色が暗くなり、しばらくの沈黙の後、「それは、この村に伝わる別の伝説によるものかもしれない。」と答えた。

「それはどのような伝説ですか?」

「数十年に一度、この村には新しい生命が生まれ、その生命が乙女の歌声を継承する。そしてその歌声によって、魔物の封印は維持されるのだ。しかし、最後の継承者がこの村から去ったことにより、封印が弱まってしまったのだろう。」

陸は驚き、「その継承者は、今どこに?」と質問した。

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