蓮は目を閉じて、深く息を吸った。「彼女は、君の母だった。」
陸は言葉を失った。母が村を去ったのは、彼がまだ幼い頃。彼女が何の説明もなく去っていったその理由が、今、明らかになった。
「だから、君もその力を持っている可能性がある。」蓮は静かに言った。
陸はしばらくの沈黙の後、「その力を、どうやって使えばいいのですか?」と尋ねた。
蓮は、庭にある小さな井戸を指さし、「この井戸に君の歌声を響かせてみなさい。もし、君にその力が宿っていれば、何かが起こるだろう。」
陸は蓮の言葉を受け入れ、井戸の前に立った。彼は深く息を吸い、歌い始めた。その歌声は、まるで風を切るように井戸の中に響き渡った。
数分後、何も起こらない。しかし、その時、井戸の中から、別の歌声が応答するように響き始めた。それは、彼の母の歌声だった。
涙を流しながら、陸はその歌声に合わせて歌い続けた。そして、その歌声によって、再び魔物の封印は強化され、井戸からの不穏な歌声は消え去った。
陸は村を救うため、母の遺した歌声の力を使ったのだった。
村は再び平和を取り戻し、陸はその後、母の歌声を守るため、村の守護者としてその役割を果たしていった。そして、その歌声の伝説は、次の世代へと受け継がれていった。




















