「まあ、気にしないでください。ただの古い言い伝えですから。でも、もし何か困ったことがあれば、私の家はすぐ近くですので、いつでもお越しください」
近藤はそう言うと、ゆっくりと立ち去った。二人は彼の言葉に困惑しながらも、引っ越し作業を続けることにした。
夕方になると、引っ越し作業も終わり、二人は家の中に入った。古びた家具や新しい荷物が混在するリビングに座り、疲れを癒していた。
「本当にこの家に住んで大丈夫かな」と美咲が不安そうに尋ねた。
「大丈夫さ。きっとただの噂だよ。それに、近藤さんも言ってたじゃないか。ただの言い伝えだって」
「そうだけど…なんだか気味が悪い」
健一は美咲を安心させるために、優しく彼女の手を握った。
「大丈夫だよ。僕たちが一緒にいれば、何も怖くないさ」
美咲は健一の言葉に少し安心し、微笑んだ。「そうね、あなたがいるから心強いわ」
その夜、二人は新しい家で初めての夜を迎えた。静かな田舎の夜、遠くから虫の声が聞こえるだけだった。健一は深呼吸をして、心地よい疲れを感じながら眠りに落ちた。




















