夜の囁き – 第1章: 2

地下室への階段は狭く、薄暗い。健一は懐中電灯を握りしめながら、一段一段慎重に降りていった。地下室は湿気が多く、カビ臭い空気が漂っていた。古い木箱や工具が乱雑に置かれていたが、特に異常は見当たらなかった。

「一体、何だったんだろう…」健一は心の中で呟いた。彼は地下室を後にし、再び家の中を歩き回った。すべての部屋を調べたが、何も見つからなかった。

彼は再び寝室に戻り、ベッドに横たわった。美咲が隣で穏やかに眠っているのを見て、少しだけ安心した。しかし、囁き声の正体が分からないままでは、不安は消えなかった。

翌朝、健一は美咲に昨夜の調査について話した。

「美咲、昨夜もまた囁き声が聞こえたんだ。家中を調べたけど、何も見つからなかった」

美咲は驚いた表情を浮かべた。「本当に?私には何も聞こえなかったけど…」

「そうなんだ。僕だけが聞こえるみたいなんだ。でも、確かに聞こえたんだ。『助けて』とか、『ここから出して』とか…」

美咲は不安げに健一を見つめた。「それって、本当に怖いわね。でも、何も見つからなかったんでしょ?」

「そうなんだ。でも、何かがある気がするんだ。僕たちが見落としている何かが…」

美咲は健一の言葉に頷いた。「そうね。でも、どうやってその何かを見つけるか…」

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