部屋の隅で、若い技術担当の一人が疑問を投げかけた。「こんな現象は、どうして起こるのでしょうか？ 単なる機器の誤作動とは思えません。あの物品が、私たちの内部にまで影響を及ぼすなんて……」彼の声は、純粋な驚きと不安を含んでいた。
斎藤は、彼の質問に対して厳かに、「我々は未知の存在に対して、常に慎重でなければならない。ここで起こっている現象は、長年封じ込められていた何かが、今、解放されつつある証拠かもしれない。科学的に説明できないこともある。しかし、その全てを無視することは許されない」と答え、その目には深い思索と決意が宿っていた。
ローレンスは、また別の解析データに目を向けながら、「私の見解では、この周期的なエネルギー変動は、あの物品が発する『内なる呪文』のようなものです。探査隊の誰もが、潜在意識の中で抑圧してきた恐怖や罪悪感が、今回の現象を通じて表面化しているのではないでしょうか。それは、我々の心に深い傷を刻む前触れとも取れます」と、哲学的かつやや憂いを帯びた声で述べた。
中村は、彼の言葉に静かに耳を傾けながらも、「そうだとしても、私たちはまず、現実的な対策を講じなければなりません。もし精神状態の悪化が隊員全体に波及すれば、探査そのものが不可能になるかもしれません。各自、定期的な健康チェックと、精神的なサポートが必要です」と、実務的なアプローチを強調した。
斎藤は、すべての意見に耳を傾けながら、「皆の意見も踏まえ、今後は、精神面と物理面の両方から、この現象を詳細に解析する体制を整えよう。ローレンス、あなたは、このエネルギー変動の数学的モデルを、できるだけ早く作成してほしい。中村、各隊員の生体データを、さらに厳密にモニタリングして、異常があれば直ちに報告するように」と具体的な指示を出した。
